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天北原野   

天北原野 (上巻) (新潮文庫)

三浦 綾子/新潮社

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天北原野 (下巻) (新潮文庫)

三浦 綾子/新潮社

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(耐えなければいけないんだわ。わたしは人間だから)物語の中で、
主人公の貴乃が自分にそう言い聞かせる、その言葉が印象的だった。
不幸な成り行きで結婚することになり、その結婚生活も耐えがたい苦労続きであったこの女性は、
ひたすらこの言葉のとおりに生きていく。
望まぬ結婚、望まぬ生活であっても。

「不条理」という言葉を思う。それが人生というものだと、納得するのは難しい。
人の悪意、戦争の行方、家庭の問題、過去の出来事。真面目に生きることが幸せの条件ではない。
この小説の主人公たちは、真面目に、懸命に生きているのに、「幸せ」になれない。
彼らは真面目で良い人間だが、恨みや悪意から完全に事由にはなれない。
主人公貴乃の夫やその父は、読んでいて虫唾が走るような嫌な人間であり、嫌な男だ。
しかし、そんな彼らにも、長所も魅力もある。善いだけの人間も、悪だけの人間もいない。
一生懸命に生きても、報われない(と見える)ことも多い。
辛いけれど、それはそれで現実なのだと思うし、
いつどういうことが起こるか予測できないのが、人生なのだとも思う。

そういう時に、自分がどうすればいいのかということを方向付けてくれるのは、
ずっと昔読んだ本の言葉や、物語だったりすることがある。




by ester-grace | 2017-01-22 01:55 | 小説

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